特集 宮教大×教育復興=学校防災①

教育

各種取組み

2019年03月31日

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被災に向き合い、学び、想像し、行動できる教師の育成

 宮城教育大学は、東日本大震災直後に「教育復興支援センター」を設置し、被災児童・生徒に対する教育復興支援に取り組んできました。2016年4月に「防災教育未来づくり総合研究センター」(以下、防災未来研=市瀬智紀センター長)に改組し、5年間積み上げてきた成果を基に、防災教育や学校安全の推進にも力を入れており、2019年4月には、国から新組織整備構想が認められ、新たに防災教育研修機構「311いのちを守る教育研修機構」が発足しました。本特集では、近年の宮教大による防災教育をはじめとする様々な取り組みを全2回にわたりご紹介します。

 

 向き合う  被災地に赴き被災と向き合う

 震災から8年が経過した今なお、被災地は復興途上といえます。同時に、重い沈黙を経て被災体験を語り始めた語り部の組織や、自然の恐ろしさや教訓を伝える伝承施設が各地に整備されつつあります。宮教大では、復興の現場に赴いて、震災を経験した方々から直接お話を伺い、被災と向き合い、想像し学ぶ機会を増やしています。

 防災未来研が企画・運営し、学生と若手事務職員が参加した昨年の研修では、南三陸町・石巻市を訪問しました。やませの影響でひんやりとした風が吹いていた当日、参加者は、未だかさ上げ工事の只中に多くのトラックが行き交い、至る所で重機の音が絶え間なく聞こえ、大きな角度をつけた防潮堤の真新しいコンクリートの壁の光景を目の当たりにして、被災と復興を実感したといいます。 

 大川小学校跡地でバスを降りた途端、線香の香りに包まれ、亡くなったいのちをずっと見守り続ける人たちがいることに気づかされました。津波の爪痕をさらす校舎を前に、木々のざわめきや鳥のさえずり、蛙の声がするこの穏やかな環境のなかで学ぶ子供たちがここにいたこと、ここに間違いなく街があり人々の暮らしがあったこと、当たり前の日常がかけがえのないものであることを再認識しました。

 

参加した学生の感想

(南三陸町戸倉地区の)高台に登り、眺めた海はとても穏やかで美しかった。まさか今自分がいるこの場所が海の脅威にさらされるとは信じ難かった。自分が当時この地域の教員だったら子どもを守ることはできなかっただろうと確信するほど、私は防災に無知すぎた。聞くのと実際に現場を踏むのとでは見えるものが全く違う。学んだことを、今あるいのちを守るために生かすのが私たちの使命だと強く思う。教師という職といのちの重みを実感した。

 震災当日、戸倉小学校(南三陸町)の児童・教職員や地域住民が避難した五十鈴神社に続く道をたどる被災地視察研修参加学生。津波は赤い鳥居の下(23m)まで到達した。

 

 こうした被災地での実地研修には、復興支援で東北を訪れる全国の教育系大学の学生も参加して交流を深めてきました。本学は、「教育大学防災ネットワーク」を組織し、全国の教員養成系大学の学生にボランティアや被災地での実地研修に参加する機会を提供しています。参加者の一人、大阪教育大学の留学生は、東日本大震災当時は中国にいましたが、2018年6月の大阪北部地震を経験し、地震の恐ろしさを実感したといいます。本学の被災地研修に参加して、「大震災で起きたことや得られた教訓を、震災を知らない人達にも共有し、それによって、非常時にどう行動すれば良いかを考えるきっかけにする必要性を感じた」と振り返っています。「私が学ぶ大阪教育大学の附属池田小学校では2001年に悲惨な事件が起きた」と述べ、教師教育における学校安全学習の重要性を実感したと語り、「教員は保護者から子どものいのちを預かっているという責任があることを強く感じた。その責任こそが、教職に就く者の誇りだ」と感想を残しています。

 宮教大は、今後もこうした被災地との近接性を活かし、震災伝承組織と連携して、被災との向き合い、語り合いを通じた人材育成を充実させていきます。

 

   学 ぶ   学部学生・大学院生に対する防災教育

 宮教大では、子どもをはじめとする多くのいのちを守る営みが、学校園種を問わず全ての教員に必要な使命と捉えており、教師になる前から、学校園におけるいのちとの向き合い方を想像し、学ぶことを重視しています。

 学部教育においては2013年度から、1年次に全ての学生が必修する科目「環境・防災教育」を新設し、環境と災害についての基礎、危急の事態に対応する先人の知恵、体験活動や安全教育の現状理解など、子どもを取り巻く防災の基礎を習得させています。また、学校安全/防災教育の学修体系を検討するチームを発足させ、学外機関との連携も含め、本学の学生が防災リテラシーを向上させるための学習内容や機会の研究・開発を進めています。

 教職大学院においても防災教育の授業科目「学校教育・教職研究A(防災教育)」を開設し、安全な学校づくりを応用学習しています。震災関連の記録集、報告書や判例等を踏まえた議論をはじめ、学校避難訓練の見学、地域災害史を踏まえた学校安全の提案、震災遺構の防災学習における活用法検討などについて、現職教員の院生と学部新卒生がともに学び、地域と協働しながら防災を多面的に捉え、実践できる力を養っています。また、気象庁仙台管区気象台などの防災関係機関の専門家からも多様な協力を得て、体験型応用学習の機会を充実させています。

 

  備える   現職教員との学び合い被災地合同防災研修

 東日本大震災以降に生まれた子どもが就学期を迎える中、現場の教員の世代交代も進み、震災の記憶・教訓の伝承が学校現場でも課題になっています。そこで、防災未来研では、現職教員と本学の学生が被災地を共に訪れ、いのちを守ることについて学び合う研修を試行しています。東北6県と仙台市の教育委員会から協力を得て、2018年度から青森、岩手、宮城、福島の延べ72名の教員と学生が参加し、石巻市の大川小学校跡地や、津波浸水高が23メートルに及んだ南三陸町戸倉地区の宇津野高台を訪れました。

 参加した現職教員は、「戸倉小学校の校長先生が、2年かけて職員や地域の方、専門家の意見を聞きながら、避難マニュアルを検討していたこと、避難訓練の際、高台の神社まで上っていたこと等をお聞きし、それまでの備えに格段の差があったのだと思った」、「自分も震災を過去の物にしつつあったことに気づき、反省した」と感想を残しています。

 1978年の宮城県沖地震(マグニチュード7.4、死者28名)からちょうど40年にあたる2018年6月12日、仙台市防災環境都市・復興室と仙台市教育センターと連携し、市立高校の新任教員と本学教職大学院生らが合同で、若林区荒井のせんだい3.11メモリアル交流館と震災遺構荒浜小学校で研修を行いました。これを機に、荒浜小遺構の学校現場での活用に関するプロジェクトも発足しました。

 2018年11月21日には、仙台市ボランティアセンター(仙台市社会福祉協議会)と連携し、災害ボランティアセンター運営サポーター養成講座を実施しました。災害時のボランティア活動を通じた助け合いを促進するため、災害ボランティアセンターに対する正しい知識を身につけ、運営に協力できる人材育成を目指し実施したものです。教員等を目指す学生にとって、災害時のボランティア活動やそれらをとりまとめるボランティアセンターの活動を知り、子どもたちへの指導や学校運営のみならず、個としての社会貢献活動にも寄与できる人材を育成するというもうひとつの目的のもと、センター運営のミニ体験などを行いました。

次回につづく

震災遺構荒浜小学校(仙台市)

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