特集 現職教員への学生インタビュー

教育

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2017年10月01日

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学校現場から学ぶこと

 学校現場で働くことの喜びや難しさとは何でしょうか。また将来教員になるとしたら、学生時代にどのようなことに取り組んでおくと良いのでしょうか。宮城教育大学でも学校現場での実践に配慮したカリキュラムを提供しているものの、学生が実際に教育現場で働く姿をイメージするのはなかなか難しいようです。
 本座談会では、本学教職大学院で学んでいる現職教員の方をお迎えし、将来教員を志望する学生が日頃疑問に思っていることを率直に聞いてみました。教員として働く際に実際何が大変なのか、学生のうちに何をしておくべきかなど、学校現場で働く先生だからこそ言える、説得力のある興味深い話を伺うことができました。

私達がインタビューしました。
左)初等教育教員養成課程 子ども文化コース所属 高橋 ひかり さん
  初等教員免許の他にも中等英語免許と幼稚園免許を取得予定。
  ボランティア、サークル、アルバイトと多忙な学生生活を送っています。
右)初等教育教員養成課程 子ども文化コース所属 加茂 篤思 さん
  中等英語免許も取得予定。バスケットボール部に所属し、
  将来は部活でバスケの指導もできる教員を目指しています。

 

―先生方は、なぜ教師を目指そうと思ったのですか?また、実際
に教師になって感じたやりがいや、心に残るエピソードがあれば
教えてください。(高橋)―

【今本】子どもの頃から学校は楽しい行事が沢山あって大好きな場所でしたが、大学生のときに家庭教師のアルバイトで、一生懸命に教えていた子が「分かった」と答えてくれたのがうれしくて…。それが教師を目指そうと思った最初の動機です。
 教師になってからは、副免許として特別支援学校教諭の免許を取得していたこともあり、主に特別支援学級の児童を担当しています。まだ平仮名が読めない子どもに、手作りで工夫したカルタを使って指導したところ、単語が
読めるようになり、そのうち文章まで読めるようになったことには感動しました。教員の仕事のやりがいを感じました。このように特別支援学級を担当する機会を得たことで、教育や育てるということそのものについて視野が広がり、子どもたちを見つめる視点が深くなれたと感じています。また、保護者の方々からも多くのことを教えてもらい、自身の子育てにも良い影響を受けていると思います。

仙台市立木町通小学校教諭 今本 聖子(いまもと せいこ) さん
 特別支援教育を担当。本学教職大学院でも特別支援について研究中。
 中学高校大学を通じてテニス部に所属。現在は三児のママ。

 

【齋藤】私は中学生のときに、悩みを持っていた時期を支えてくれた先生がとても素晴らしく、自分も大人になったら子どもたちを支えられるような仕事をしたい、と思い教師を目指しました。
 また、自分の好きな理科の楽しさを専門的に伝えたくて、現在は中学校の教師をしています。私の思う理科の楽しさの一つは、普段は何となく見ているものに理由が付けられることです。小学生が「夜になるとなぜ月が追い掛けてくるの?」と尋ねてきたときに、そう見える理由を一緒に考えながら、答えを導き出していくことは本当に楽しいものです。また、中学生であれば、実際に起こっている事件について、化学分野の知識をいかしながら考えることもできます。何が危険なのか、安全と言われているけれども本当に安全なのかを、少しでも知っているのと全く知らないのとでは大きく違います。そうした点での理由付けができるのも、理科の楽しさだと思います。

名取市立みどり台中学校 齋藤 広大(さいとう こうだい)さん
 教科は理科を担当。本学教職大学院で道徳教育を研究中。
 大学時代は混声合唱団で活躍。現在は二児のパパ。

 

―理科の楽しさを教えるために、どのような工夫をされていますか?(高橋)―

【齋藤】最近の子どもたちは、実体験が減っているように感じることもあるので、本物に触れさせてあげるということを自分の中の一つのテーマとしています。
 例えば、理科の授業でガスバーナーに火を付けるのにマッチを擦らなければなりませんが、今は家の中で火を見る機会のない子もいます。そのような子どもたちは実物に触れることが嫌なのかというとそうではなく、むしろ新鮮に感じているようです。本で読んだことがある、テレビで観て知っている、そういうものをできるだけ準備してあげて実体験につなげられるようにしています。

 

―現場で苦慮されていることは多いと思いますが、教師になる前となった後で感じたギャップなど「教育現場のあるある談」を教えてください。(加茂)―

【齋藤】ギャップというより、なってみて分かったのは、「生徒を指導するのにここまで考えて指導しなければならないのか」ということです。例えば、教室の環境整備、宿題の取り組ませ方や取扱いなど、見えていない部分の準備が考えていた以上に必要です。私は学部を卒業してすぐに教員になったので、優先順位や仕事の進め方が分かっておらず、最初は時間の使い方に苦慮しました。

 

―教材研究についても相当な準備をされるのですか?(加茂)―

【齋藤】理科の場合は、授業の中で教材が及ぼす影響が大きいので、一人一個の教材は可能な限り準備してあげたいと考えています。しかし、学校では煩雑な仕事に追われ、教材研究をする時間が意外にありません。もし今、私が学生に戻れるとすれば、より突き詰めた教材研究を行いたいですね。
 教材研究以外にも準備すべきことは多いので、学生のうちに、自分自身がここまでやらなければならないのかと感じるところまで教材研究をやっていれば、そのときに考えたものを教師になったときに使うことができます。


【今本】特別支援の場合は、通常学級以上に子どもを観察することが非常に重要です。その子が実際にどこまでできて、どこまで分かっていて、どこが難しいのか、何に一番苦労しているのかということを見極めます。そして、どのようにすればその子がより分かるようになるか、手立てを工夫することが大切な仕事だと思っています。

 

―他のエピソードはありますか?(高橋)―

【今本】同じ教職大学院の仲間たちにも聞いてみたところ、小学校教員は動きが激しいという意見が出ました。特に特別支援学級内では膝をつくことはもちろん、とっさに子どもの動きに対応できるように動きやすい服装をする必要があります。
 出張がある日に、急にスーツを着ると子どもたちがそれに気付いて「先生、そのバッグを持って行くんだ!」とか「今日はどこかへお出かけなの?」と言われます。特に低学年の子どもたちは「先生、今日はかっこいいね」とか「かわいいね」と褒めてくれます。少しの変化に気づいて認めてくれる子どもたちの姿は、とても素晴らしいです。私たち教員も、その姿勢を見習わなければと思います。

 

―教師は大変多忙だと聞いていますが、ワークライフバランス(仕
事と家庭との両立)はどのようにされていますか?(高橋)―

【今本】私には子どもが3人います。共働きで大変ですが、一番気を付けていることは、体力と体調です。疲れて子どもより先に寝ることもありますが、風邪一つひかず元気に仕事をして、家でも元気に過ごすことが一番だと思い生活しています。多忙でもまずは寝て、元気に食べて、どうしてもやらなければならないことがあるときは、朝早く起きて頑張っています。
 それに同僚の先生たちにとても助けられてきました。子どもの体調が悪くなって、急に帰らなければならないとき、周りに迷惑を掛けるかと心苦しいのですが、「私もそうだったから大丈夫だよ」と声を掛けていただけるだけで気持ちが楽になります。私も子育て期間を過ぎたらそのようなことを言える先輩になりたいと思っています。

【齋藤】私にも子どもが2人いますが、妻は専業主婦です。しかし、できるだけお父さんであると認識をしてもらいたいので、手伝える部分は手伝っています。正直に言うと、妻に頼っている部分は大きいと感じています。バランスが取れているかと言われると、取れていません。
 ただ今では、宮城県で新任の教員が採用されるときは、学校の中で、日頃の悩みや業務の悩みを相談できる先生を配置することが検討されています。また、私のときにはなかったと思うのですが、今は12月末に採用予定者が集められる場があって、そこでも「休みはしっかりと取れるか」という質問が挙げられていました。今では、これから先生になる人たちへのサポートが厚くなってきているという印象を受けます。ただ、それが今いただいた質問内容の答えになっているかは分かりませんが。

 

―御自身の子育て経験を教育現場でいかせたこと、子育てをしてから見えたことがあれば教えてください。(高橋)―

【今本】親御さんたちは一生懸命お子さんを育てていて、私はその子どもたちを預かり教えているんだということを、親になり実感として理解できたことが一番の大きな気付きでした。それと、学校側から事前にお願いしていたことを忘れてしまうようなことがあっても、いろいろな事情で忘れてしまうこともあると柔軟な受け止め方ができるようになりました。

【齋藤】私は、子どもに対する言葉掛けが変わったことです。実は教員になるまで、子どもに対して「すごいね」「こんなことができるの」と言ったことがあまりなく、教師になった当初は自然に褒めるということがうまくできませんでした。
 今本先生もおっしゃったように、親は子どもを一生懸命に育てています。生まれたての子どもは本当に小さくて、親が世話をしなければ何もできません。一つ一つできるようになっていく姿を見ていると、勉強して分かるようになるということはすごいことだと思えるようになりました。褒めることが恥ずかし
くなくなり、かえって自然にできるようになったことは、自分の子どものおかげです。

 

【加茂】私は地元の小中学校で学習支援のボランティアをしているのですが、小さな子でも問題が解けたときに褒めてあげると本当にうれしそうに喜んでくれます。褒めるとさらに意欲が沸いてくるので、褒めることの大切さを感じています。


【高橋】私も小学1〜4年生の学童保育のボランティアで、遊びの補助や勉強のサポートをしています。褒めることもそうですが、時に叱ることも大切で、それが難しいと感じています。子どもたちは年齢によってそれぞれ理解度や出来ることが違うので、そのようなことも考えて叱るのは本当に難しいです。

 

―叱るということについて、気を付けていることはありますか?(高橋)―

【齋藤】叱ることはタイミングが重要ですね。難しいかもしれませんが、子どもたちとのコミュニケーションが十分でないと、叱ることはできません。小学生ほどではないけれども、できるだけ子どもたちと過ごす時間を作るようにしています。基本的には褒めるところを探して生活していますが、おっしゃるように叱らなければならない場合もあります。しかし、そのときに心に響くかどうかは、普段一緒にいるかどうかということに大きく影響を受けます。その子の発達段階に合わせて、かみ砕いて説明して状況をつかませます。中学生の場合、話せば通じるので、叱るというよりは諭すという言葉のほうがしっくりきますね。命に関わる、相手を怪我させるような危険な場面は特別ですが、そうでないときはできるだけ一緒にいて、諭すところから入ります。むしろボランティアで限られた期間だけ入って叱るということは、勇気が要ることだと思います。


【今本】叱るということは、本当に褒めることの百倍ぐらい難しいことではないかと思います。齋藤先生が言われたように、人間関係ができていないときに正しいことを言っても響きません。ですから、普段から人間関係を作ることが大事です。それから特別支援の観点から言うと、叱られている内容が分かっているかどうかということもよく確かめる必要があります。分からないようであれば、改めてそれを道徳の時間に取り上げ、自分たちが行った出来事をそのまま勉強の中に持ってきて、ゆっくり考え直す授業を行ったことがあります。叱ることは難しい課題ですね。

 

―先生方は、なぜ教職大学院で更なる学びを深めようと思ったのですか?また、教職大学院では具体的にどのようなことを学んでいるのですか?(加茂)―

【齋藤】自己流には限界があると感じました。様々な勉強会に参加していますが、なかなかディスカッションをする場がありません。本を読んだり、講義を聞く機会はありますが、自己流の域をなかなか脱することができませんでした。そうした曖昧だった部分をはっきりさせたいと思いました。
 私は道徳の授業を一つのテーマとして研究しているのですが、どこまで学校の教育現場に寄与していけるのか、どのようなアプローチの仕方があるのかを明らかにするためには、自己流では難しいと思ったのです。

【今本】働いてみて分かることがあります。また、分からないことの多さにも気付きます。最近は特別な支援が必要なお子さんが増えてきており、それに伴って、様々な問題も増えてきています。そのような背景の中、特別支援教育にかかわる者として、勉強しなければならないことが多いと思い始めたところ、大学院で勉強する機会をいただくことができました。私たちの年代になるとミドルリーダーという立場になるため、自分の研究以外にも、学校をより良くするにはどのような役割があって、どのようなことを考えながら動くべきかということをたくさん学んでいます。

 

―学部と大学院で学べることの違いがあれば教えてください。(加茂)―

【齋藤】働いていると職場で先生方から教えてもらい、感覚的に自分の中に入って来るものがあります。大学院にはその裏付けができる学びがあります。例えば、道徳の授業で何回言っても子どもに伝わらない或る価値観がありました。それについて調べてみると、理論的にはその段階の子どもたちが理解することは難しいことが分かりました。ですから、それより一歩手前の段階を教える教材や発問が準備できれば、子どもたちに伝えたい内容について話をすることができます。
 また、今本先生が言われたように、ミドルリーダーになると、それまで質問をしていた立場から、質問を受ける側になります。そのときに、なぜこのようにするとうまくいくのかということも含めて話ができれば、今まで先輩方が果たして来られた役割の一つを自分も果たすことができます。教職大学院に入学してから少しずつこのような感覚になってきました。

【今本】学部のときは、まだまっさらな状態です。高校から来て、今は基礎的なことをたくさん学ばれていると思います。私たちは一度、現場に出て学び直しているので、専門的なことをより深く追究する形の学びが必要です。例えば、ミドルリーダーとして成長する目的で施設見学に行ったり、普段、現場で働いていたら行けないような所に研修に行ったりもします。学校に関わる施設についても、どのような経緯で作られ、どのような目的で行われているかということを勉強しながら過ごしています。
 ただし、基礎的なことを一生懸命学ぶ時期があってこそ、その先に深く追究する学習があるとも思います。

 

―私たち学生に今のうちに学んでおいた方が良い勉強や技能、経験しておいた方が良いと思うこと、教師を志望する上で心掛けておくべきことなどについてアドバイスをお願いいたします。(高橋)―

【今本】いろいろなことを広く学び、まずは様々な経験をしておいた方がいいと思います。それは人間の幅を広げることになります。就職してからは目の前にやるべきことが増えていくので、時間がありません。今のうちにたくさんの経験をしておいてほしいと思います。一方で、興味があることについては深く追求できる時期なので、そちらもしておいたほうが良いと思います。


【齋藤】そうですね。趣味や興味のあるものは、子どもたちと共有する場面が出てきます。小学校でも同様だと思いますが、特に中学生になると子どもたちの趣味の幅も広がります。一人の先生が知らなくても、他の先生が知っていれば「○○先生に聞いてごらん」と言ってあげて、その子は好きな趣味の話でコミュニケーションを広げることができます。教えられることは勉強だけではありません。ですから、もちろん教職の勉強は必要ですが、それ以外に興味を持っていることも磨くと良いと思います。
 それから、ボランティアなど子どもたちと触れ合う機会があれば積極的に参加した方がいいです。教材研究をするにしても一人であれこれ考えるだけでなく、ボランティアで関わった子を例に、どのような聞き方をすれば良いのかな?と考えていく方がより具体的なイメージが持てると思います。


【高橋】ボランティア、アルバイトのほか、サークル活動など多くを経験したいと取り組んでいますが、思いのほか忙しく、先を見越した勉強が出来ていません。

―忙しい中でより充実した生活を送るためのアドバイスはありませんか。(高橋)―

【今本】時間の使い方というのは、忙しいからこそ工夫をしようと意識するものだと思います。今はとても充実していて、その中で勉強の時間を取ろうと必死で考えているのだと思いますが、それで良いと思います。せっかくいろいろなことに挑戦して充実しているのですから、隙間の時間を使って勉強するなどして、時間の使い方を工夫した方がいいのではないでしょうか。上手に時間を使うことが将来、仕事や子育てをするときにいきてくると思います。


【一同】ありがとうございました。

 

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