特集 村松新学長に聞く。今後の宮教大について

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2018年10月01日

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 2018年4月、宮城教育大学の新学長に村松隆氏が就任し、新たな体制がスタートしました。任期は2022年3月までの4年間になります。
 国立大学法人をめぐる環境が大きく変わりつつある中で、宮教大はこれからどのような方向へ進んで行くのでしょうか。村松新学長はどのようなビジョンで宮教大を運営していくのでしょうか。本学新入生の2人が村松新学長に話を伺いました。

 

 

【インタビュア】 私たちがインタビューしました!

・中等教育課程数学教育専攻1年 佐藤 駿太さん(左)
・中等教育課程英語教育専攻1年 佐々木 悠さん(右)

 

 

―村松学長のこれまでの経歴についてお聞かせください。(佐藤)ー

 【村松】私が本学に採用されたのは1980年でした。今から38年も前のことです。当時、附属理科教育研究施設という名称の組織があり、その化学部門に所属して、主に小・中・高等学校の理科に役立つ教材開発を行っていました。1997年に理科教育研究施設を改組し附属環境教育実践研究センターを新設したため、その中で物質環境(主に水環境)を中心とした研究と教育に着手するようになりました。その研究の傍ら、青年海外協力隊に対する環境教育支援や、途上国の高等教育機関の指導者を本学に招聘し、高等教育に関する集団研修を主催するなど多種多様な取り組みの中でグローバル社会における多様性の認識等、かけがえのない多くのことを学びとることができました。2008年からは教職大学院(高度教職実践専攻)を兼務し、総合教育の視点で現職教員院生指導に携わりました。私の教授時代は、教育の質的高度化や多様化対応を図る変革期の中にあり、とても慌ただしい時代でしたが、一方でとても充実した日々を送りました。2013年に附属特別支援学校長、2016年に附属防災教育未来づくり総合研究センター長、2017年に教員キャリア研究機構長を経て2018年4月より学長に就任しました。

   村松 隆(むらまつ たかし)1953年1月生まれ 出身:宮城県
   1979年 4月 静岡大学大学院理学研究科 修士課程修了
   1989年11月 理学博士(東北大学)取得 専門は有機物理化学

 

―どのようなビジョンをもって学長になられたのですか。(佐藤)―

【村松】本学は教員養成の単科大学として50年の歴史があります。これまでの本学の歩みをもとに、全国からたくさんの受験生が集まり、学生が本学で学んでよかったと思える魅力あふれる宮教大にする活動を行いたいと考えています。例えば、本学の魅力のひとつの特別支援教育教員養成課程は、全てのしょうがい領域(視覚、聴覚、知的障害、肢体不自由、病弱)のスタッフを有し、それぞれの領域に関する全ての免許取得が可能な、全国でも有数の教員養成課程です。東北地方のみならず、遠く四国地方などからも入学しているので、今後もこの魅力をフルに活かし、特別支援教育の素養を学生全員にしっかり根付かせたいと思います。
 また、東日本大震災から7年が経ちますが、近年増加している様々な自然災害をとても重く捉えています。本学は震災後から防災教育を推進するための研究センターを有していますが、今後も決して力を緩めず、学校防災について先端的な取り組みを進め、防災教育の核となる大学を目指して、その成果を全国、ひいては海外に発信していきたいと考えています。

 

―村松学長から見た宮城教育大学の魅力を教えてください。(佐々木)―

【村松】本学は、教員と学生の距離が近く、良い意味でフラットな関係を保ち、構えず日常的に議論ができます。困ったことがあればいつでも相談ができます。このような関係は自然と生まれたものではなく、1960年代における大学での学生紛争を経て、教員と学生が日常的な議論の必要性を強く認識し、全国で初めて教員と学生が共に学びあうための合同研究室を設置するなど、多くの先進的な試みを通して実現したものです。合同研究室設置は、当時全国的にもとても有名となった出来事でした。教員と学生の交流は、さらに専攻・分野を越えた学生間の交流にも発展し、教員参加に加え多種多様で上質な「知」を生みだしていきます。教員と学生が共に考え、共に悩み、共に進んでいく姿勢は、本学で半世紀にわたって培われた魅力であり、とても大切なものです。

 

―大学改革を進めていると伺いました。私たちの大学生活にどのような影響がありますか。(佐藤)―

【村松】教育をめぐる社会情勢が大きく変わってきています。人口減少と高齢化、急速な技術革新、グローバル化と競争の激化など、みなさんも耳にしたことがあると思います。そして、このような変化に加え、子どもや若者をめぐる様々な教育課題も複雑化しています。教員に求められる資質能力は、複雑化する教育課題の解決に必要な、より高度なものです。本学に対する社会からの要請は、深刻化する現代的教育課題への対処能力を有する人材の育成という重大なものとなっています。このようなことから、本学は、これまでの実績を活かして、教員養成機能をさらに強化するための学部・大学院改革や組織改革等を実施しようとしています。学生諸君には、本学をさらに飛躍発展させるために、「ここはこうあってほしい」「ここはこうあるべきだ」という意見を聞かせてほしいと思います。改革は大学を構成するすべての人により成し遂げられる、私たちが創造するという意識で能動的に関わってほしいと思います。

 

 

―学生時代にしておいた方がよいと思われることがあれば教えてください。(佐々木)―

【村松】情報だけを追いかけず、様々な事象に対し常に関心を持ち、よく考え、自分の意見を持って行動してほしいと思っています。そして自分の考えについて他者と意見交換し、自身の考えをさらに深めてほしいと思います。常にでは困りますが、時々、挫折を含め多くの経験をしてください。そして、経験から得るものを確実に自己集積し、自己肯定感を強めたり、他者の心を理解することを心掛けることが肝要です。
 また、社会人になると、なかなかまとまった時間が取れないので、学生のうちに思い切ったことをやってほしいと思います。本学にはボランティア等に精力的に取り組んでいる学生もいます。自分の周りだけでなく、視野をワイドにし、高い視点で物事を捉え、机上やITツールで終わらせず、実際に現場に身を置き、肌で真実をつかみ、見極める力を身につけてほしいと思います。

 

―学びたい授業や実習がたくさんありますが、サークルやボランティア活動、留学なども経験したいので、受けられない授業もあります。どのようにバランスをとればよいでしょうか。(佐藤)―

【村松】まず、カリキュラムは学生諸君の学習を保証するための時間構成ですから、確実に履修してください。現在、本学には様々なボランティアの紹介が来ており、その中にはとても魅力的で有意義なものが多くあります。学生諸君にとっては、主に休業期間に参加するケースが多くなると思いますが、学部なら4年間、大学院なら6年間というタイムスケジュールの中で、余裕をもって参加できるようにプログラムを組むことが肝要です。計画を立てたら、まず教職員に相談し、アドバイスをもらうことを勧めます。

 

―地震や豪雨など自然災害は後を絶ちません。防災教育について教師にはどのような能力が必要とお考えでしょうか。(佐々木)ー

【村松】防災活動で最も大事なことは、言うまでもなく「命を守ること」です。自然の力に打ち勝つだけの力は人間にはありません。学校において教師は、適切な状況判断により適切な退避行動を指導しなければなりませんこれが防災行動であり、そのために必要な準備を確実に行うことが教師の使命です。刻々と迫る災害を目前にして、適切な行動とはどんなことなのかをしっかりと冷静に考えることが必要です。本学は、附属防災教育未来づくり総合研究センターを中心に、学校防災・安全教育についてのプロジェクト研究を進めています。7年前の東日本大震災で失われた多くの尊い命を決して忘れることはありません。防災教育に強い人材育成は私たちの使命です。すべての教員が防災について知識を持ち、自然災害に関する正しい理解と共に、防災行動という実践的な研鑽を積むことが必要です。

 

―最後に私たち学生にアドバイスをお願いします。(佐々木)―

【村松】現代は情報化時代にあるとは言え、利便性を追求するあまり、必要以上の情報が私たちを取り巻きます。氾濫する情報に埋没した人の姿が日常スタイルとして一般化しているようにも見えます。指先で情報を取り出し、指先で情報を送ってしまう。入手と伝達に責任ある明確な意思がどの程度反映されているのだろうか。学生諸君に対しては、身のまわりの事柄について、関わりの目的に応じて懐疑的に考えていく姿勢を常に持ち続けてほしいと願っています。スマートフォンなどを持たずに大学に来たとき、はたしてどんな感じがするでしょうか、一度試してみては。


【佐々木・佐藤】本日は本当にありがとうございました。

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