【研究室FILE】宮城教育大学の教員の独創的な研究をご紹介します。
学校教育講座 教授 平 真木夫
現在の私の研究は大まかに、⑴中一ギャップを学習面からとらえた研究、⑵教育評価に関する研究、⑶ICTの活用、特に検索サイトの活用に関する研究の
3つに分類できます。いずれも知識の獲得過程や知識をどのように表現し評価できるのかを認知心理学的な立場で考察しています。
平 真木夫(たいら まきお)教授
なぜ「知識」に拘るのか振り返ってみると、1980年代に大学に入ってそのまま90年代を認知科学という学際領域にドップリ漬かった大学院生活を過ごしたせいかもしれません。その頃は第2次人工知能ブームで、エキスパートシステムとかニューラルネットワークや機械学習、ファジィ理論などが出てきた頃でした。エキスパートシステムとは、簡単にいうとIf-Thenの形態で知識を表現
するシステムで、限定された領域でそれなりの成果が得られました。たとえばMYCINといった感染症診断治療支援システムがありました。
しかし、当然ながらIf -Then表現で全ての領域を網羅することはできませんし、実装された知識が全て正しいかどうか検証する手段もありませんでした。そして、宮教大に赴任する頃には第2次人工知能ブームは終わってしまい、現在は知識を表現することをあきらめてDeep Learningという力業の学習、つまりニューラルネットワークのつながりだけで出力層だけが「人間にとって意味がある」という立場が主流になってしましました。極端な言い方をすると、人工知能研究は意味ではなくデータでゴリ押しすべきという形になってしまったのです。このようなちょっと屈折した文脈の中で、知識はどのように表現できるのだろうかと考えている今日この頃です。
平研究室について 教職大学院2年 服部 修弥
平研究室では学習心理学や教育評価などの理論を基に、子供たちがより深く思考を行える授業の形について考察を行なっております。また、小中高各校種のカリキュラムを分析し、各校種間を一貫する学習内容を考察したり、振り返り活動をどのように行うかを検討したりしています。
教職大学院2年 服部さん
昨今の学校現場は、学習内容の習得と定着度の診断の繰り返しに留まらず、習得した学習内容を日常生活や他の学習にどのように生かしていくのかを大切にした学習過程・カリキュラムを構成している場合がほとんどです。こうした流れの中で、知識を獲得し活用する力をどのように評価するべきかということ
について考察を行うことが急務となっていますが、平研究室では、このような教育現場の課題についても検討を行なっており、ルーブリックを活用したパフォーマンス評価の効果についての研究も行なっております。
その他、平研究室ではゼミ生が各種の学会に参加し、理論的な側面から学習場面を見つめ、実習等を通して実践に取り組んでいます。学習心理学や教育評価論といった観点を基に改めて学校の現場を見つめることで、新たな知見を得ることができています。